子供のオンライン学習、親が気をつけてあげたいこと

欧州では新型コロナウイルス感染防止のために学校閉鎖が開始してから2週間目に入りました。日本と比べ、学年度の真っ最中である欧米では、インターネットを快活に使ったオンラインライブ学習が継続されています。これまでの知識と技能を十分に活用し、学校側も子供側もスムースにオンライン学習に入ったように見えますが、10日目を迎える今頃から想定していなかった自宅学習の影響が見えてくるのではないでしょうか。こちらにもしばしばそのような相談が出てきています。ここでは、家庭で子供の学習を見守る親にできる気をつけてあげたいこと、できることを紹介したいと思います。


調査から:ITに関わる職業は最も「心の病」にかかりやすい

日経XTECHの調査によると、心の病と診断されたことのある割合が最も高いのはプログラマー、次にSE(システムエンジニア)であったことがわかっています。どちらもITを中心とした技能職業と言えます。

IT業界で囁かれるストレスの要因には 長時間労働や技術革新のスピードや厳しい納期などが聞かれていますが、ここではITに関わる環境要因と職務要因に注目してみましょう。

そこに見られるストレス要因には

ー固定された空間内で、長時間一人で責任をもつ

ー仲間や上司とのコミュニケーションが長時間にわたり希薄になる

ー要求される仕事内容は質的・量的にもきつい


さらに、そのような環境のなかで以下のような負荷要因が重なってきます。

ー長時間の集中を要する

ー高度なスキルを要求される

ー自分に期限や守備範囲を決めることが許されない


同じことがオンライン学習でも起こりうる

このようなITプロフェッショナルの厳しい職場と職務環境からくるストレスが、今子供が直面しているオンライン自宅学習にも起こり得ています。

● 家にいながら学校と同じ時間管理を自己責任で求められる。

● 時間を区切りながらも狭い固定空間での長時間の学習

● 長時間、同じ姿勢を保持

● 集中力を切らすと指導が入る

● 視覚的制限の中、聴覚への負担は増える(その上言語は外国の言語)

● 資料や課題はタイピング、場合により自分で印刷しスキャンや写真で提出

● 気軽に質問できる友達がそばに誰もいない(不明瞭でも授業はどんどんと進み、教師は気づくことができない)

● 多数の科目の課題を時間内に仕上げていくスキルを要する

● オンラインなので読み物(補助的資料)は必然的に増える


さらにこの環境の中で周りの様子が見えない中、孤独感がさらに子供を追い詰めます。

● 「きっと自分だけがうまくできていない・わかっていない」という不安感に襲われる

● 先生はこんな自分をダメな生徒だと評価するだろうと考える

● 周りから取り残される感覚に襲われる

このように辛い気持ちに苦しみ、徐々に自己肯定感は下がります。


親が気をつけてあげられること

このような中、親が子供たちにしてあげられる事とはどんなことでしょうか。

一緒にパニックになり、追いつかない課題や成績を責めたり、追い詰めたりしてはどうなるのでしょうか。普段なら嫌なことがあっても、帰ったら守ってくれる親がいる、笑って過ごす場所である、そんな「安全地帯」さえ失ってしまいます。子供は逃げ場を失い、心理学的には無気力感を学習していきます。


親も、まずは現場から一歩下がってこの状況を冷静に見て見ましょう。

私たちは初めての大きな試練を経験しています。それは子供たち・親たちだけではなく、教師や学校側も同じです。「子供たちにとってこれでいいのだろうか」と自問自答しながら試行錯誤をしているのです。そして、おそらく多くの他の親・子供達もやはり少なからず同じ思いで苦しんでいることに、私たち親は気がつくことができるでしょうか。


では、今、心的負担を抱えて苦しむ子供達にしてあげられることとは何でしょうか。

以下のことを試してみてください。

◎ 「本当にその通りだね」「ウンウン(相槌)」

まずは本人が抱え込んだストレスを口に出させてあげましょう。親が先回りしてしまうのではなく、子供自身に下手でもいいから話して、と促してください。そして「大変だったね」「よく頑張ってるね」「苦しかったね」とまず共感してあげましょう。

◎ 「一緒に」「大丈夫」

一人で悩んだりせず、家族みんなで考えようと促してください。頼りになる両親が自分の理解者になってくれたら、それだけで大きな安心感が得られます。

◎ 教師に子供のストレス状態を伝え、しばらく負担を軽減するための提案を得ましょう

どんな時も同じなのですが、学校の学習は家族だけで「でできる・できない」と決めるのではなく、今は特にこの未経験な状態だからこそ教師に相談して一緒に解決策を考えてもらいましょう。教師は評価するだけではなく、子供の一番の伴走者であることを思い出してください。

◎ 大切なコミュニケーション

教師に子供の苦しみ・適応が容易でないことを伝えることは、学校側にもメリットがあります。学校側に、結果として生じた子供達の心の変化を知らせることは実施中の授業プログラムの大切なフィードバック情報となります。学校側もきっと試行錯誤の中で、何が子供たちに最も適切な方法かを模索しています。親からのコニュニケーションは、状況改善のための大切な情報になるのです。



最も大切なのは親の長期的な視点

最も大切なのは、今だけを切り取って子供を「できる・できない」と評価することではなく、長期的視点で子供達がこの非常事態を乗り越えることができることです。そして最も避けたい事態は、学校閉鎖が解かれた後、子供達が学校に行く、また学習への気力が減退してしまったり、蓄積疲労による倦怠感また昼夜のリズムを壊して起きられなくなる事態です。ですので、今一番子供に気にかけてあげたいことは、子供の短期的な学習評価よりも環境の変化に関わらず子供が規則正しい生活を送れること、日々体を適度に動かすこと、そして部屋にこもらず家族と気持ちを共有したり笑いあったりする時間を持つことに尽きるのではないでしょうか。


お子さんの様子に心配がある方は info@globalwellbeing.nlまでメールをお送りください。


グローバルウェルビーイング

淵上美恵

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